日を増す毎に寒さが厳しくなる季節だからこそ、着心地よく暖かな服を着たいもの。今号では、ウールやカシミヤなど素材にこだわったとびきりの一枚を集めました。
中でも特にご紹介したいのが「尾州ウールジャンスカワンピース」です。
今回はウール生地を縮絨させて、しっかりとした厚みと高級感に仕立てた「圧縮ウール」を使用しています。暖かさと上品な印象を兼ね備えた生地の魅力を知るべく、愛知県にあるニット工場、宮田毛織を訪れました。
▲左から、宮田毛織の松野氏、宮田氏、着心地スタッフ。
「ウールは生き物」――。尾州で生まれた「圧縮ウール」の他にはない上質な魅力。
尾州とは、今で言う愛知県西部から岐阜県西濃地方にかけての地域のこと。木曽川流域の豊かな自然に育まれ、遙か昔から織物・編物の生産が盛んに行われてきました。その起源は奈良時代にまで遡ると言われます。長い歴史を経て、今では高級毛織物の一大産地として広く知られるようになりました。
▲大きな円形状の機械が猛スピードで生地を編む。
宮田毛織は、愛知県一宮市にあるニット工場。1954年の創業以来、日本のウール産業と共に歩んできた歴史を持ちます。「創業当時から他にないものを作る、オリジナリティを出すという方針は一貫しています」と語るのは現社長のご子息である宮田貴史氏。今回ご紹介する「圧縮ウール」も他にない生地の一つです。
ウールと言えば何よりも天然の暖かさが魅力。その魅力を活かしながら、上品な質感と光沢感、そしてなめらかさを実現したのが「圧縮ウール」です。「ウールの柔らかさや風合いを活かしながら、かたくならないよう生地を一定の厚みに抑えるのが実はとても大変なんです」と教えてくれたのは、圧縮ウールを担当する松野利雄氏。ちょっとした気温や湿度の違いに左右されるので、機械の微調整は必要不可欠。これは天然繊維ならではの苦労だと言います。
「ウールは生き物なので、同じものが一つとしてない。だから同じ質感、同じ着心地の生地に仕上げられるように職人が調整を繰り返します」と生地を見せながら説明してくださいました。試行錯誤を重ねて仕上がった圧縮ウールの生地は、非常にやかで驚くほどよく伸びます。二列の針で生地の表と裏から編み立てるダブル編みを使用しているため、保温性にも優れ、重たくなりがちな冬のアウターやワンピースに仕立てても軽やかに着こなせるのです。
新しい技術やトレンドも、伝統的な文化や誇りも大切に――。新旧織り交ぜたものづくり。
宮田毛織では、最新の技術や機械を取り入れる一方で、古い機械を修理しながら長く使い続けています。生産スピードは新しい機械の方が圧倒的に速くても、古いものでしか生み出せない生地もあるのだそう。見せていただいた機械は、どれも丁寧にメンテナンスされ大切に扱われていることがわかります。「新旧ハイブリッドで続けていきたいですね」と語る宮田氏。それは技術面に留まりません。
刻一刻と移り変わるトレンドを追いかけて人々のニーズに応えながらも、古くから続く尾州産地としての伝統や日本製であることの意義も大切にしていきたい――そう語りながら案内してくださったのは、宮田毛織の歴代の生地が集められた資料室。
視界の端から端まで生地のサンプルが並べられた空間は、まるで大きな図書館のよう。最近のおすすめはどれか尋ねると「やっぱり自分が企画に携わった生地をおすすめしたくなってしまうので」と笑う宮田氏と松野氏。事業に携わる人誰もが、自分のものづくりに自信と誇りを持っている……そんな意気込みを感じて思わず背筋が伸びるような気がいたしました。
▲資料室に並べられた大量の生地見本。
「尾州ウール」の未来を見据えて――地域と協力しながら作り上げるウールの新しい形。
高い技術と品質を保ちながら、長く毛織物に携わってきた尾州地域。しかし、実は地元・一宮市でも毛織物産業の実態はそれほど知られていないと宮田氏は言います。そこで宮田毛織では、ウールの魅力をもっとたくさんの人に知ってもらいたいという願いから、様々な試みを始めました。
最近では、展示会で使用した生地サンプルを再利用して新たな製品を作り、自社ブランド「色と柄」として販売を開始。また、地域と協力して「ひつじサミット尾州」というイベントを開くことで、地元産業の次世代の担い手を支援したり、一般の人にウールの良さに改めて気づいてもらうなど少しずつでも目に見えた成果は出てきているのだそう。「近隣の人や一般の消費者の方とも接する機会が増えて、尾州ウールについて知ってもらえるようになってきました」と宮田氏は笑顔で語ります。
暖かさも上品さも叶える冬の一着を
ぜひお試しください。
ジャンスカワンピースは、「圧縮ウール」の暖かさ、柔らかさ、軽やかさを存分に活かして丁寧に仕立てました。淑女の冬の装いをもっと豊かに、楽しくするとっておきの一枚です。ぜひカタログにて詳細をご覧ください。
