木々の葉が色づき、冬の足音が聞こえ始める今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
寒さが厳しい季節、『着心地のいい服』冬アイテムで注目していただきたいのが、「ウールガーゼ中綿コート」です。
冬のコートは重くて肩が凝る…以前からそんなお声を多くいただいておりました。暖かくて軽いコートが作れないかと試行錯誤しているところに出会ったのが、今回使用する「ウールガーゼ」。暖かいのにチクチクしなくて軽い、ガーゼならではの風合いに感動し、ぜひこの生地でコートを作りたい! とその一心で作り上げた逸品です。
ウールのコートが持つイメージを一新する驚きの着心地、その軽やかさの秘密を、産地・尾州の人々のものづくりにかける想いとともにお届けします。
尾州とは愛知県北西部から岐阜県にまたがるエリア一帯のことで、古くから織物の産地として知られています。
今回のウールガーゼを扱っているのは、岐阜県笠松町の生地屋・青木織物。「ウールのガーゼ生地は市場では珍しいものですが、軽く、柔らかく、暖かい…ということで素材にこだわる方からご好評いただいています」と語ってくださったのは取締役の青木一雄氏。「年間100本くらいは新しい生地を試作しますが、実際に売り物として世に出るのはそのうち2~3本程度ですね」との言葉に、高品質な生地作りにかける想いがうかがえます。
生地の生産は基本的には分業制。「時には難しい注文もありますが、長年付き合いのあるベテランの工場さんと一緒に理想のレベルまで作り上げている」と青木氏は言います。尾州地域ではどのように生地が作られているのか。青木氏は実際に、染め、織り、仕上げ加工、それぞれの工場に私たち着心地スタッフを案内してくださいました。

①染め
最初に見せていただいたのは、大きな染色工場です。
「夏場は過酷な現場なんですよ」と笑い交じりに説明してくださったのは、青木染工場の専務取締役・青木良廣氏。100年以上前から代々この地で染め物に携わってきました。糸染めに使用する水は80度近くに沸かしたもの。様々な大きさの糸染め用のかまが並び、工場全体に高温の湿気が充満しています。「季節によって染料の調合や温度を調整します。いつも同じ設定で同じ色に染められるわけではないので、そこは職人の技ですね」とのこと。
徹底した品質管理はもちろん、木曽川の水資源を守るため、染色に使用した水は工場内で綺麗に浄化してから自然に返します。日本の水質基準は世界でもトップレベルの厳しさだと言われていますが、モノづくりには、地域と共生していく姿勢も重要なのだと感じました。

▲高温で染められた直後の糸の束
②織り

▲ゆっくりと丁寧に織られていくガーゼ生地
次に案内していただいたのは、織機が4~5台ほど並んだ木造の小さな織物工場。大きな音を立てながら少しずつ生地が織られていく様子を、工場を営む中島ご夫妻が見せてくださいました。
「旧式の織機なのでスピードはゆっくりですが、その分優しい質感に仕上がるんです」。生地は織機に張った経糸の間に緯糸を通すことで織られます。素材によって糸の張り具合を調整する作業を「整経」と呼びますが、これが至難の業。実際に作業できる職人は今や限られていると言います。ガーゼは織りの密度が甘く、少しでもずれると生地の目が斜めに寄ってしまい見栄えがまったく違うものになってしまうのです。
「特にウールは繊維が絡みやすくガーゼに仕立てるのが難しいため、長年の経験と技術が必要ですね」とのこと。理想の品質を実現するための、熟練の腕と細やかな作業の大切さを実感しました。
③仕上げ加工(起毛・洗い)
織り上がった生地が次に運ばれるのは、生地に洗いをかけたり、起毛を施す整絨工場です。辿り着いたのは愛知県一宮市の藤井整絨。織り上がった生地が集められ、ここで最終加工に入ります。
「起毛と一口に言っても生地の素材や仕上がりのイメージによって、加工方法は様々です」と案内してくれたのは、営業部長の獅子崎氏。生地を起毛させる機械はどれも見上げるほど大きなものばかり。今回のコートで使用した生地はワッシャー(洗い)加工により、繊維をほぐすことでチクチク感を抑え、ふっくらとした柔らかな風合いを実現しています。最後の加工までこだわり抜いて、ようやく尾州の高品質な織物は完成するのです。
日本随一の織物の産地でありながら、尾州の職人の数は次第に減りつつあると言います。今回、生地の織りを担当してくださった中島ご夫妻も、後継者が見つからないため自分たちの代で工場を閉めるつもりだと伺いました。日本の伝統技術を継承していく難しさを痛感するとともに、でき上がったウールガーゼの生地の温もりがとてもありがたいものに感じられました。
2025年は『着心地のいい服』創刊10周年の節目の年でした。これからも「日本製」「天然素材」のコンセプトを守りながら、あなた様の毎日にそっと寄り添うお気に入りの『着心地のいい服』でありたいと、スタッフ一同心から願っています。
