降り注ぐ日差しが眩しく感じられる今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
『着心地のいい服・2026年夏号』では、清涼感のある素材や風通しが良く心地よい仕立てのアイテムを選りすぐりました。
中でも今回一押しのアイテムは、和紙混のデニム生地に繊細な花柄を描いたワンピース。一般的なデニムよりも柔らかくしなやかな風合いで、さらりとした肌触りが魅力の素材です。一枚でパッと華やかに映える大人のための総柄は夏のお出かけにぴったり。繊細な表現を実現している技術を取材するため、
捺染
(プリント)を施している京都の工場へ訪れました。
京都府・高瀬川。水の豊かな土地柄、日本でも有数の染色産業が盛んな地域として知られています。
今回訪れたのは1986年創業の株式会社美研繊維。捺染から仕上げまでを一貫して行うことで、質の高いものづくりを続けています。
実は6年前にも『着心地のいい服』スタッフが取材にお伺いしたことがありました。「京都の染工場としては後発の方なんですよ」と話してくれたのは現社長の石井勝洋氏。「先代が個人で生地屋をやっていた当時、こんなデザインの生地があれば…と思ってもなかなか対応してくれる工場がなくて、じゃあ自分で作ってみよう!と思い立って始めたのがきっかけです」とのこと。
定番であるオートスクリーン捺染機をはじめ、希少な旧式のロール捺染機、最新のインクジェット捺染機を使い分け、出来上がりのイメージに合わせて昔ながらの技術と新しい技術を共存させています。

▲左から株式会社美研繊維の石井氏、着心地スタッフ。
そもそも捺染とは、染料や顔料を用いて生地に柄を描く染色方法のこと。今回の生地で使用している顔料染料は、細かい柄でも鮮明に描けるのが魅力の一つです。
見せていただいたのは横幅の広い大きなオートスクリーン捺染機。「横幅160cmまで対応できます。これほど大きなオートスクリーンを行える工場は国内でも数少ないですね」と石井氏は教えてくださいました。
まず、下地となる生地の布目をまっすぐに揃え、柄の版がずれないように細心の注意を払います。それから上に顔料をのせ、スキージと呼ばれるゴム製のヘラのようなものを動かして柄を染めていきます。
「今回は柄の線が細く密集しているので、顔料をのせた際に線が太くなってしまわないか心配でした。特に版と版の境目は、柄が途切れないように前の版と次の版の端を重ねて描くことになるので、線が太くならないようゴムの圧力の調整に気を使っています」と、総柄の捺染を施す工夫を教えてくださいました。

▲国内最大級のオートスクリーン捺染機。幅160cmまで一気に染め上げる。
捺染をした後は、しっかりと熱をかけて生地に色を定着させます。「顔料は少しずつ生地になじんでいくので、デニム生地自体にも味が出てくるんですよ」と話すのは、生地の企画デザインを担当した小原屋繊維株式会社の村上博昭氏。
デニムならではの表情変化も相まって、着るほどに味わいが深まる生地が完成しました。
その上質さを活かし、長く愛着を持って楽しめる大人の女性にふさわしい上品なワンピースに仕上がっています。ぜひお手に取ってお試しくださいませ。

▲石井氏に生地染めから洗いの工程について説明を受ける着心地スタッフ。
綿や麻などの天然繊維は生産された年によって微妙に質が変化するため、捺染する際の温度や湿度の違いで仕上がりの発色にも違いが出てくるそう。
版を作るとき、実際に捺染を施すとき、仕上げを行うとき…それぞれで発生する問題点を切り分けて一つ一つ検証しながら取り組んでいるとのこと。「メイド・イン・ジャパン」への高い評価は丁寧な品質管理と慎重なものづくりの姿勢から生み出されているのです。
また美研繊維ではオリジナルの雑貨ブランドを展開するなど新しい試みも積極的に続けています。
「京都でも次第に染工場は減ってきています。染めから仕上げまで一貫して行う工場は、今ではうちともう一社くらいです。海外へ受注が流れてしまっている状況があるので、地域全体で協力して盛り上げていきたいですね」。そう語る石井氏からは、捺染の技術についての揺るぎない自信と、業界の今後を案じる真剣な思いが伝わってきました。
