「これ、私の勝負服なんです」と、白いリネンのエプロンのベルトを結び、流れるような所作で中国茶を淹れる笑顔の井澤由美子さん。このドレスタイプのエプロンは、オーダーメイドのお気に入り。「腰がきゅっと締まって、背筋が伸びるので疲れないんです」。
着心地を敏感に感じる繊細さは、そのまま井澤さんの料理にも表れています。

23歳で飲食店を始め、料理界へ飛び込んだ井澤さん。

「後先考えず突然始めてしまいました。当時は料理で身をたてるなんて考えてもいなかったけど、母も日本料理教室をしていましたし、それに私、根っからの食いしん坊ですから(笑)」

なにもかも初めてで、仕入れから食器選びまで悪戦苦闘しながらも、お客様の体調や好みを考え、旬の食材を使って即興で料理を作る、臨機応変さが魅力のレストランです。

その後、料理番組の女性プロデューサーに声をかけられメディアに出演。中医学や薬膳の知識を身に付け、発酵食のよさを紹介するなど「体にいい食」の情報を発信しています。

「祖父も医療系の仕事だったので、食養生には昔から興味を持っていたんです。私の知識のもとになっているのは、庭の植物や日々の暮らしの中で培ったもの。もともと天然のものが美味しいと感じていたし、やっぱり体に優しいですよね」

忙しい毎日ながら、自身の体調と心に向き合う朝の数分間を大切にしていると語る井澤さん。

「起きたらまず白湯を飲み、味の感じ方でその日の体調を分析。内臓のどこにダメージがあるか判るので、ランチや晩御飯にはケア食材を気軽に組み込み、美味しい食養生を楽しんでいます」

地方へ出向くことも多い井澤さんは、その土地ならではの食材や文化、そして職人の手仕事に積極的に触れていると言います。農家の人と話し、目の前でとれたものを調理する。昔ながらの調味料や酒を造る蔵を訪ねる。窯元で実際に作るところを見て食器を選ぶ…。

「お砂糖もお酢も天然のものを使っています。昔ながらの国産のものが好きだし、職人の手仕事に魅力を感じます」

職人のものづくりへの共感は『着心地のいい服』の理念とも通じます。そんな井澤さんがふだんから身に着けているのは、シンプルで仕立てがよく、素材のいい服。

「気にいった服は長く着ることが多いです。着れば着るほどなじんでくるし、安心感があります。衿を立ててもいいし、折ったらかわいい感じとか、細かなところに工夫がある服が好きです」

『「着心地のいい服」シャツ』を素敵に着こなす井澤さん。その言葉には、天然の素材と日本製のものに対する愛情と信頼が込められていました。

プロフィール

いざわ・ゆみこさん プロフィール

いざわ・ゆみこ 料理家、調理師、国際中医師。
旬の食材の効能と素材の味を生かした、シンプルで美味しいレシピが人気。特に発酵食や薬膳に造詣が 深く、レモン塩や乳酸キャベツなどの火付け役としても有名。NHK「きょう の料理」「あさイチ」などの番組出演の他、体を健やかに保つ企業の商品開発やCMなどで活躍。著書多数。