閑静な住宅街を歩き、フラワースタイリストとして活躍する平井かずみさんのアトリエを訪れました。
アトリエに入ると、個性豊かな花器が木製の棚やテーブルに並んでいます。大きな窓から入った新鮮な空気が部屋の中を通り抜けると、アトリエ内に生けられた花々がふわりと香る。この心地よいアトリエで、平井さんは花の撮影や花のお届け便≠フ準備を行っています。
「昨年は世の中の生活様式が変化し、仕事や暮らし方ががらりと変わりました。対面で花の教室が開けないときに始めたのが“花のお届け便”です。馴染みの農家さんから花を送っていただき、このアトリエでブーケを作って必要な人のもとに届けています」
それ以前は忙しく飛び回っていたが、今は自分の時間をたっぷり取れるようになったという。
「早朝、散歩に出かけるようになりました。まだ人の気配がしない時間帯に行くと、植物たちの世界にお邪魔している感覚になります」
植物が芽吹く姿を目で観察し、触れて、香りを嗅いで。体の感覚を使って植物と対話することで、心が安らぐのだと話してくださいます。そんな植物と真正面に向き合う平井さんは、日々の服にも気を配っています。
「毎日着る服は直接肌に触れるものだから、天然素材のものを選ぶようにしています。植物に触れているときと同じで、自然のものから生まれた天然素材の服を着ていると、どこか安心するんですよね。柔らかな肌触りや天然素材の温かみが好きで、冬はカシミアのセーターをよく着ています。寒い日はその上にさらにカシミアを重ねて着ていますね。」
そんな平井さんが『着心地のいい服』のアイテムのなかで注目したのは、100%オーガニックコットンのレギンス。伸縮性があるため足を締めつけず、はきやすいのが特徴です。
「素材がオーガニックコットンなので、肌触りがとてもいいです。足首まで柔らかく包み込んでくれる感じがします。冷え取りをするときはシルクをはいた上に身に着けています」
また、自分流にファッションを楽しむポイントをこう話されます。
「私が使う花器はグラスやピッチャーなど、ほかの用途として使っていたもの。服も同じで、訪れる場所によって着崩したり、正してみたりと、ひとつの用途だけでなく、着方を変えて楽しんでいます。服そのものに命を吹き込むような感覚で、その服とどう付き合うかを考えることが大切じゃないかなと思っています」
“普段使いの器でしつらえる花”を楽しむ平井さん。愛着のあるものを日々の暮らしに上手く調和させながら命を吹き込む。そんな素敵な生き方は、花や服の魅力を最大限に活かしています。
ひらい・かずみ フラワースタイリスト。
人と草花をつなぐための「日常花」を提案。雑誌やイベントでのスタイリングや、テレビ、ラジオでも活躍中。2020年には植物にまつわるアイテムを届けるオンラインショップ『seed』を開設。著書に『花のしつらい、暮らしの景色』(扶桑社)などがある。